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【反捕鯨国オーストラリア】調査捕鯨経験者の私がオーストラリアで暮らして思うこと

更新日:

筆者は大学生のとき南極海の調査捕鯨に参加しました。

若い世代は調査捕鯨と聞いてもピンとこないかもしれませんが、1987年から2019年までの間、南極海(‘94年からは北太平洋でも)で水産庁が行っていたクジラの調査です。

85年生まれの筆者もクジラ文化世代の人間ではありませんが、大学で水産学を専攻していたことにより、たまたま調査捕鯨に行く機会に恵まれました。

南極の海で、グリーンピースやシーシェパードというオーストラリア主体の環境保護団体による妨害行為を受け、そのとき初めて日本とオーストラリアの間に大きな確執があったことを知ります。

中学でホームステイし大好きになった国オーストラリア。正直なところ少しショックでした。

その後10年間、調査捕鯨を経験した身として捕鯨は必要だ!と信じ続けてきましたが、やはりオーストラリアで暮らしていると違った意見もたくさん耳にします。

今回は筆者の体験談をお話し、「捕鯨はこれからの時代必要か?」という半世紀に渡る国際問題について考えてみたいと思います。

 

調査捕鯨に参加することになった経緯

転機は2008年、大学の水産学科に通っていたときです。

 

「皆さんに紹介したいアルバイトがあります。」

そう言って担任の教授がプロジェクターをつけました。

 

南極海鯨類捕獲調査(JARPAⅡ)アルバイト募集!

 

6カ月無寄港

 

アルバイト代200万円

 

教室がざわつきました。

「南極!?200万!?マグロ漁船的なやつ?」

スケールが大きすぎて想像がつきません。

 

どうやら教授の友達が日本鯨類研究所(以下、日鯨研)というところで勤務しており、全国の水産学を勉強している学生を対象に、調査捕鯨の助手を募集しているとのこと。

過酷な環境であることは何となく予想できましたが、それ以上に、これは一生に一度の南極に行くチャンスだ!という高揚感を抱きました。

昔から思い立ったら即行動派の私は、留年覚悟、彼女に振られるの必至で、早速教授の研究室を訪れ参加表明。

マジで行くん?とクラスメートには何度も聞かれましたが、私としては140人のクラスなのに自分しか志願者がいないことの方が意外でした。

...まあAB型なんでそんなもんかとも思いましたが(笑)

 

と、参加を決めるに至った背景はそんな感じです。

この後、東京にある日鯨研でクジラの生態や捕鯨論争などについて勉強し、2007年10月に山口県下関から出航。調査のスタート地点であるマダガスカル島南の南極海域に向かいました。

 

南極海での調査捕鯨とシーシェパードによる妨害行為

まず、このシーシェパードについて簡単に説明します。

シーシェパード・・・1977年、国際環境保護団体グリーンピースを脱退したカナダ人ポール・ワトソンによって設立された海洋生物保護を掲げる環境保護団体。アイスランドやノルウェーの捕鯨船を体当たりで沈没させるなど過激な行動で知られる。

 

要は、国際法で決まったことであろうが自分たちの正義にそぐわないなら無視する。捕鯨を止めさせるためには暴力行為も厭わない。船長のポール・ワトソンは日本の調査捕鯨船とコスタリカ漁船の安全を脅かしたとして国際指名手配中。要はエセ環境保護団体なわけです。

 

では本題に戻ります。

調査をスタートして2カ月経った頃、OCEANIC VIKINGという船に見つかりました。

OCEANIC VIKING

この船はオーストラリア政府の巡視船ですが、平たく言えばシーシェパードとグルです。すぐに日本の調査船団の居場所を報告され、シーシェパードの高速船スティーブ・アーウィン号が追ってきました!

 

最初に調査船団の一隻「第二勇進丸」にシーシェパードのクルー2人が乗り込みました。広報用(?)の写真を撮影した後おとなしく拘束されたとのこと。食事を与えられた際には肉も食べ、2日後にはシーシェパード側に引き渡されました。

 

スティーブアーウィン号はその後も、筆者たちの乗る母船「日新丸」を追いかけてきました。

逃げるために調査コースから外れたので調査は一時中断です。

 

24時間交代制の見張りも始まりました。

深夜の南氷洋に浮かぶスティーブ・アーウィンからの光。その不気味さは今でもはっきり覚えています。

日本出航前から、シーシェパードは捕鯨船を沈めるのも厭わないと公言していたので、まさかそこまで😅と思いながらも、Xデーが近づくにつれ緊張感が増していきました😥

 

2008年3月3日

「Warning! Warning! This is Nisshinmaru captain.」

避難訓練で聞き覚えのある警告音です。

 

ああ、ついに来たか。

前日にそこまで迫っていたので驚きはしませんでした。

 

そっとカーテンを開けると、ドクロの旗を掲げたシーシェパードの船が。

デッキから何か投げてきています。

上司からは各部屋で待機するように言われたのでじっとしていましたが、しばらくすると異臭(足の爪を切って嗅いだときのにおいw)が漂い始めました。廊下に出ても食堂に行っても同じ臭い🤥

 

酪酸という薬品が入った瓶を100本ほど投げ込まれたとのこと。

外で対応していた調査団長と海上保安官は瓶が割れた際に飛沫を浴び、皮膚が被れて治療を受けていました。

酪酸瓶の破片

後日、シーシェパードの船長ポール・ワトソンは、オーストラリアメディアの取材に対しこう話していました。

「我々は悪臭弾を投げただけだ。日新丸も初めは照明弾で応じてきたが、シーシェパードのクルー1名が撃たれ負傷した。その後私自身も衝撃を感じ、胸を見ると防弾チョッキに弾丸が刺さっていた」

newsblog

↑英語がいける方は読んでみて下さい。本当にデタラメばかりです。。

 

さらに日新丸を横から撮影した写真とともに

「あそこが光ってるだろう?スナイパーがこっちを狙ってるんだ」

などとネットに書いてありました。

 

その光ってる場所ですが、実際はデッキ上の掛け時計。ガラスが反射してキラッとしてるだけです。

シーシェパードも一応自分たちなりの信念があって活動してると思ってましたが、平気でデマを流す集団だと知って引きました😑

 

支離滅裂なシーシェパードの主張

メルボルン郊外Williams Townを散歩中、10年ぶりに見かけたスティーブ・アーウィン号

調査捕鯨は採取しなければならないサンプルやデータが多く、採取や管理は最新の注意を払って行われました。

揺れる船体、下敷きになったら怪我では済まない鯨体、テンションのかかった巨大ワイヤー、凍傷になりかねない過酷な環境。デッキ上では常に大声が飛び交っています。

キャッチャボート(捕鯨砲がついたクジラを捕る船)では、クジラを苦しませないよう人道捕殺にも配慮し、「鉄砲さん」と呼ばれる熟練の砲手が、数十メートル離れて泳ぐクジラの急所を高確立で一撃で射貫くのです。

 

調査に真剣に取り組む日本の姿勢を知らずに、一度も自分たちで調査したことのないシーシェパードやオーストラリア政府は

「クジラは絶滅しかけている!」

「殺さなくても調査できるだろ!」

 

などと言いたい放題です。

 

まず鯨類の個体数ですが、そもそも1960年代まで鯨油目的に乱獲を続け、大型のクジラを絶滅の危機に追いやったのは日本ではなくオーストラリアや欧米諸国です。日本はそれらを絶滅させないために調査を始め、毎年の捕獲頭数も資源量の0.01~0.5%という数字で決して生態系に影響を与える量ではありません。(オーストラリアのカンガルー捕獲調査における捕獲頭数は、生息数の13~56%)

さらに80種類いるクジラのどの種が絶滅しかけているかも彼らは考えません。60~70年代にかけて、ザトウクジラ、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラの順で、絶滅に瀕している大きなクジラに対しては全面的に商業捕鯨が禁止されてきました。日本の調査捕鯨でも、そういった種類はほとんど捕獲せず、対象となるのは資源量の多いミンククジラやクロミンククジラが9割以上です。しかし2000年代に入ってザトウクジラやナガスクジラの資源量が復活してきていることも日本の調査で明らかになっています。筆者が参加した2007/2008年の調査でも、ザトウクジラ発見の報告は小型のクロミンククジラに追随する勢いで無線機からよく流れていました。

 

殺さなくても調査できるというのも机上の空論でしかありません。

調査捕鯨の主目的は将来の食糧危機に向けて、クジラを持続可能な水産資源にすることです。

そのためには、どの種類の、どの系群が、どの海域に、何頭ぐらいいて、成熟度はどれぐらいで、何を食べていて、その餌はどれぐらいあって、と言ったデータが必要です。人口変遷を予測するのもほぼ同じ方法で行われます。

クジラの年齢を知るには耳垢栓(耳あか)が必要ですし、成熟度は皮脂厚を測定したり骨端版や生殖腺をサンプリングする必要があります。クジラの血液やひげ板、外部形体や背びれの写真からは系群構造を解明できますし、胃内容からは餌を知ることができます。病変や寄生虫も全て写真に収め調査野帳に記入します。(もちろんクジラを殺さないでデータ採取できる項目もあります。区画法で予測頭数を算出したり、餌となるオキアミをサンプリングしたり、遺伝解析用の背中の皮膚を採取したりですが、この辺りに関しては調査船団の一隻、目視採集船で行われます。)

こうした一頭のクジラから100項目以上のデータやバイオプシーを採取し、帰国後それを元にデータ解析、国際捕鯨委員会(IWC)に毎年調査結果を提出しているのです。日本がやっているのは調査捕鯨を隠れ蓑にした商業捕鯨だと言うだけは簡単ですが、だとしたら調査って一体なんなのか教えてほしいものです。

※2010年にオーストラリアとニュージーランドは、自分たちの主張に拍を付けるべく、初めて6週間の非致死的合同調査を行いました。彼らは「近くで尾びれの写真が撮れた。背中のスキンサンプルが取れた。大成功だ!」と主張しますが、日本の行っている調査と比べて規模が違いすぎて比較できないため結局議論は平行線のままです。

 

捕鯨は本当に必要?

南極大陸と海上保安官

ここまでシーシェパードの悪事、反捕鯨国の無茶苦茶な主張について書いてきました。

  • 南極条約で「南極地域はどこの国にも属さない」と決まっているにも関わらず、南極大陸から200海里はオーストラリアの排他的経済水域だと主張(領土領海問題を主張する割に、和歌山県の太地町まで来てイルカ漁に抗議するのはどうかと😒)
  • 皮膚や粘膜に対して腐食性のある劇薬、水生生物に対しても有害、無処理での環境中への放出を禁じられている酪酸を海上で投げまくる
  • 極寒の南極海上で捕鯨船に体当たり

 

こんな身勝手なシーシェパードを到底理解することなんてできませんし、その気持ちは今も変わりません。

ただ、最近あるオーストラリア人女性と話したことで、シーシェパードは別として日本の捕鯨は実は必要ないんじゃないか?と考えるようになりました。

 

筆者は今バイロンベイという、オーストラリア最東端の街に住んでいます。

サーフィン、ホエールウォッチング、ヨガ、オーガニックの食べ物なんかが有名で、ヒッピーや自然を愛する人たちで溢れています。

そんな街だからこそ反捕鯨支持者が圧倒的に多いですし、休日にはシーシェパードの露店なんかも現れます。

先日キャンプ場に滞在していたとき、オーストラリア人女性と捕鯨問題について話し合ってみました。

タブーな話とはわかっているのですが、オーストラリア人がどう思ってるのか非常に興味があるのです。

 

捕鯨に行ったことがあると言った瞬間彼女の顔が引きつりました。

少し声を震わせながら

「私はシーシェパードを100%支持するわ」

「今の日本人は誰もクジラを食べないじゃない」

「クジラの肉を売って翌年の調査費に回すって言ってるけど、誰も買わないから在庫がどんどん溜まってるわよね」

「クジラは特別な生き物で数も少ないのになんで殺すの?」

 

この辺りは定番の謳い文句なので筆者も淡々と返答していました。

しかし、一つ言い返せなかった言葉があります。

 

日本はIWCで賛成票を得るために調査予算で他国を買収している。

 

これは初耳でした。捕鯨対談が終わった後、そんなことないだろうと思って調べてみたら日本語記事、英語記事ともに結構出てくるんですよね。

https://www.newsweekjapan.jp/foreignpolicy/2010/06/post-136.php

https://www.afpbb.com/articles/-/2735790

https://www.theguardian.com/environment/2008/mar/06/whaling.japan

 

その他にも

  • 日本国民一人当たりの鯨肉の年間消費量はわずか40g。
  • 鯨肉販売の赤字を補填するために、毎年10億円近くの税金が投入されている。
  • 東日本大震災の復興予算のうち12億円が、調査捕鯨費、シーシェパードによる妨害対策費として計上された。
  • 日鯨研とニコイチの関係である共同船舶の株主は、ほぼ日鯨研と農水省直轄の財団法人だけで形成されている。
  • 日鯨研とこれら財団法人は農水省からの天下り先。万年赤字の日鯨研にも関わらず、非常勤理事の年俸は全員1000万以上。

これらが本当なら、調査捕鯨は一部の官僚の利権のために続けていたことになります。

筆者は日鯨研の人たちを知っていますが、決して利権のために動いているなんて感じはしませんでした。皆さんクジラについて博学で、SNSでもクジラ関連の話題を楽しそうに発信しています。

 

でも…それだって筆者の主観、裏がない理由にはなりません。

 

一般人の私には情報の信憑性を突き止めるすべはなく、一旦調査捕鯨の是非については確固たる意見を持たないようにしました。

でも一つだけ考えられるのは、このまま捕鯨を続けたとして、世界的食糧危機が到来したときに本当に食糧源になり得るのか?ということ。

 

個人的には、NOだと思います。

 

これだけ反捕鯨派が世界中にいる中で、捕鯨賛成国の中でも好んで鯨肉を食べる人が限りなく少ない中で、どこの企業がわざわざ鯨肉を販売したがるのでしょうか?

水産資源の完全養殖技術は日進月歩です。ジャガイモから人口肉を作る技術もアメリカの会社によって既に確立されています。

最近では品種改良したイエバエによって、堆肥をたったの一週間で有機肥料に変えることもできるようです。

 

人口90億人になると言われている2050年まで残り30年。希望的観測と言われればそれまでですが、おそらくその頃にはもっとバリエーション豊かな代替食糧が開発され、農作物の生産性も上がっていることでしょう。需要が先細りの一途を辿るクジラをいつまでも追いかけるのではなく、こうした生産技術の開発にエネルギーを注いだ方が賢明なのではと思ってしまいます。

 

先行きの見えない日本の捕鯨

2019年に日本がIWCを脱退したことにより、調査捕鯨は30年の歴史に幕を下ろしましたが、それと引き換えで商業捕鯨を大々的に再開したことで、シーシェパードの活動家や反捕鯨国の人たちからは厳しい目が向けられたままです。

 

筆者一個人の結論としまして、調査捕鯨にしろ商業捕鯨にしろ、もういいのではないでしょうか。。

太地、下関、石巻など、クジラ文化が残っている街はごくわずか。そんな限られた地域と、全国の限られた世代だけに需要がある商業捕鯨。国からの援助がない商業捕鯨において、民間の捕鯨業者が採算が成り立つ事業ができるのか既に不安視されています。

ほぼ地産地消でしかも自転車操業。反捕鯨者からは目の敵にされている状態。そんな商業捕鯨がこれからの日本にどんな恩恵をもたらしてくれるのでしょうか。時代遅れの文化だから消滅してもいいと言うのではありません。文楽、芸者、歌舞伎…担い手が少なくても日本固有の美しい文化は他国からも評価されますし、保存されていくべきものだと思います。

それらと比べると捕鯨はデメリットが大きすぎます。2019年、調査捕鯨を止め、商業捕鯨に切り替えた後でも、早速オーストラリアやイギリスでは商業捕鯨反対のデモと、日本製品の不買運動が行われています。正確な経済的損失を計ることは不可能ですが、世界中に日本の捕鯨に嫌悪感を示す人がいることを考えると無視できる問題ではないと思うのですが。

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